11月25、26、27の3日間はリサーチメンバーのヨンジュとスジと稽古をし、合間に韓国人ダンサーの友達であるジナン、ミンスン、チョロンもリサーチに参加してくれた。
最初の2日間は、事前に伝えた企画の趣旨についての、いわば答え合わせのようなものだった。
企画趣旨や実験内容をスジに事前に翻訳してもらい、ヨンジュにも共有してからスタート。
思っていた以上にスムーズにいったのは,彼女達が非常に協力的だからだと思う。
今回の実験では、リサーチの元となるハン・ガンの「흰」という物語の本を購入し、先ずは事前に読んでおいて貰うことが必要だった。
スジが夏に日本へ公演に訪れた際には、日本では中々手に入らない韓国語版の「흰」を買って来てくれるようにお願いをした。
それらの行程があって初めてスタートラインに立てる。というのは日本での実験を経たからこそ出来る準備だったし、色々な意味で、スジには助けられた。
リサーチメンバーであるイ・ヨンジュと出会ったのは2017年のソウルダンスセンターで、
京極朋彦の振付で共演したのがきっかけだった。当時彼女は23歳だった。
彼女はいわゆる舞踊学校や芸術学校を出ていない。ダンスのワークショップに出るのが好きで、たまたまダンスセンターのワークショップショーケースで彼女を見たのがきっかけで、京極が声を掛けたのが始まりだ。
ナチュラルで癖のない動きと勘の良さ、そして日本映画が好き。謙虚だけど芯の強さが光り、英語が話せて日本語の理解もある、年齢よりも落ち着いて見えるヨンジュは今回のダンサーのイメージにピッタリだった。
でも、2年ぶりに会う彼女はとても大人びて、私は彼女について何も知らないと改めて思うのだった。
もう一人のリサーチメンバーであるチョ・スジは、実は、最初は来れる時だけ来て貰う通訳としてお願いをしていた。彼女は韓国の舞台やテレビで活躍する女優で、リサーチ期間も稽古が毎日ある多忙な人だったからだ。
しかし、本当はもう1人来れるはずのダンサーのドタキャンがあり、急遽彼女にもリサーチメンバーをお願いすることになった。結果としてはドタキャンがあった方が良かったけれど、稽古の始まる三日前、頭が真っ白になった。
スジとは2015年の日韓合同制作「颱風奇譚」で共演し、約2ヶ月半稽古と舞台を共にした。私の所属する東京デスロックの多田淳之介作品に何度も出演し、去年も「カルメギ」という作品で日本を訪れたり、2017年のダンスセンター滞在の時も一緒に呑んだりダンスを観に来てくれていて、交流が続いていた。
でも、私はスジと役柄で絡むことは殆ど無かった。優しくて美しくて、更に心も真摯で美しい。日本語のメールがすぐに返ってくるほど日本語の理解があり、お願いごとに嫌な顔一つせず対応してくれる。
しかし、私は彼女についても何も知らなかったと言えるかもしれない。人の作品で共演して得られるその人の情報と、自分のやりたいことに付き合って貰うときに見えてくるその人はまるで違うのだと実感した。
ダンスを言葉にし、物語にしたときに見えてくるスジやヨンジュの感性。
それだけではなく、「これが必要だからお願いしたい」と言った時にどう対応するか。それから、私は重要だと思ってないけれど彼女達が重要だとするものへの向き合い方を垣間見た時、私は彼女達を改めて知るのだ。
短い期間で、2人のさまざまな顔を見た。
丁寧に手紙を書いて送り合うような日々を過ごしたと思う。
下記は、私のダンスを観て二人が創った物語だ。
yeonjoo′s story
未練が残ってしきりに振り返る.
走る汽車のように時は流れ、外の風景は変わる。
送れそうもなかったその心も自然に送り出す。
神秘的な世の中を見つめ直す。
미련이 남아 자꾸 뒤돌아본다.
달리는 기차처럼 시간은 흐르고, 바깥풍경은 변한다.
보내지 못할 것 같았던 그 마음도 자연스럽게 떠나보낸다.
신비로운 세상을 다시 바라본다.
suji’s story
서서히 검은 바다 깊숙이 가라앉는다.
지금의 나는 그때의 나를 지운다.
시간은 빠르게 흐른다.
눈을 떴을 때 흔들리는 빛 아래 누워 있었다.
徐々に黒い海の奥深くに沈む。
今の私はあの時の自分を消す。
時間は早く流れる。
目が覚めたとき、揺れる光の下で横たわっていた。